装甲悪鬼村正 琴乃の劒冑 ムック本感想～その２～

こちらではムック本での加筆・修正や書き下ろしエピソードの感想を。

まずは各話の加筆、修正等について気になった部分から（全部は拾いきれないので）。
各話の感想は個別に記事を書いているのでこちらよりどうぞ。

◆第一話 琴乃の玉鋼
特に気になったのは、琴乃の母親が湊斗さんの事を琴乃に紹介するというのが、ムックでは夕飯にご招待と、より具体的な内容になっていた事でしょうか。いつか、湊斗さんがこの未亡人にどうやって惚れられたのかという話とか読んでみたい。今までに無かったシチュエーションですし。後、年号の方も修正されていましたね。

◆第三話 琴乃の積沸かし
琴乃の「いやいやいや」というモノローグ。自分の書いたSSではセリフとして琴乃に言わせていますが、別に意識したわけではなく全くの偶然だったり。地味に嬉しいシンクロでした。
ムックでは琴乃がどうオヴァムを追っていたかが追加。オヴァムを使用していた可能性の高いチームを回っていたようです。

◆第五話 琴乃の甲伏せ
かなり大きな変更としては、ラスト辺りのキャノン中佐のセリフ。連載時は「ブラッドクルス？譫言やら幻覚の話はどうでもいい」と書かれていたのが「レッドクルス？譫言やら幻覚の話はどうでもいい」に修正されています。
というのも、HJ版では琴乃ちゃんから引き出した情報の中で、湊斗さんに関する物をを信子さんは中佐に報告する際に「真打劒冑（ブラッドクルス）」と訳したようなのですが、ムック版では「紅い劒冑」、つまりレッドクルスと訳していたようなのです。これによって、中佐は村正を「紅い真打」では無く「ただの数打」と誤認。この時点（ゲーム本編前）で中佐が村正を気にしなかった事に説得力が増しました。
信子さんの素直な通訳に救われた湊斗さんですが、進駐軍翻訳通訳部としてそれでいいのか信子さん（笑）。あるいは琴乃ちゃんを助けてくれたお礼なのか！

◆第七話 琴乃の火造り
ナンパしてきた仕官達にハンマーをお見舞いするシーンは何度読んでもお気に入り（笑）。ジョーンも良いキャラしてます。
ラストで琴乃ちゃんが劒冑鍛造の恐ろしさを改めて感じる部分が追加。これは最終話にも通じてくる所ですね。

◆第八話 琴乃の土置き

「こんなの望んでいない。みんな止まればいいって思っただけ。疾く飛びたかっただけ」
「信子の、いや信子達レーサーの夢をオヴァムが叶えたんだ。運動とは熱。だからオヴァムは周囲の熱を奪った……」

追加部分。信子さんが琴乃ちゃんに黙ってオヴァムを使った真相は、元レーサーとして純粋に速さを求めていたからのようです。

◆第九話 琴乃の焼入れ
グレムリン隊を壊滅させたテルと必中の陰義がチート過ぎる…。とりあえず敵を見とけば勝手に矢が飛んでくとかお手軽だよなぁ。距離をとった状態だと、テルとジョーンの動体視力を上回る速度で動けるか、距離を詰めるまでに矢を受けても平気な程の防御力でも無いと勝負にならないかも。矢払い出来れば何の問題も無いのですが、あれは絶技だしなぁ。
剣術に秀でたジョーンが、テルでの近接戦でどう立ち回るのかいつか見てみたい。

艦隊の事件が信子さんに深い傷跡を残している記述が追加。本人の言う通り陰義の代償なのかは不明ですが、オヴァムが最終ステージに到達したきっかけと考えると割と正鵠を射ているのかも。以前書いた考察も少しはかすっていたのかな。

改めて読み直すと、ジョーンが見つけた文献には「野太刀（南北朝時代の劒冑の主流）を備えた紅い劒冑、妖甲村正は大和を戦乱の世に変えた後、どこかに封じられている」と記されていたようですが（琴乃のちゃんの知る情報と合わせて考えれば）、文献を書いた人は二世と三世を混同させていたのかな。大和の混乱を導いた村正は一世と二世で、三世は劒冑として生まれてすぐに二世と共に封じられたわけで。封じられる前の三世を見た人が、これがあの妖甲かと勘違いして書いたのかもしれませんね。

◆第十話 琴乃の鍛冶押し
琴乃の母親が具体的に何をしたのかが追加。本人は英国への出稼ぎと思って人を紹介していたようですが、実際は人買いに紹介していたようです（恐らくは知り合いの研師とか劒冑に関わる技術者を）。

「不幸な出来事はあった。だからこそ、より多数を救わなければならない。それが正義だ」

このセリフ少し感じる所があったので、いずれ村雨のSSで形にし…出来たらいいなぁ。

◆第十二話 琴乃の劒冑
こうして最終話を読み直してみると、ろくな準備もせず、けして良好とは言い難い環境で劒冑を鍛造してしまう辺り（0からではないにしても）、信子さんやジョーンと同じく琴乃ちゃんも十分天才ですな。
飲まず食わずだったとすれば、それこそ命を削りながら琴乃ちゃんは劒冑を造っていたのでしょうが、虫の息の信子さんはよくそれまで耐えていたもんだ。意外とそれほど時間はかかっていなかったのかもしれません。

月を背後にした村雨の写真は息を呑むほどの美しさ。なんて絵になるんだろう…。

故郷から始まった琴乃の旅が巡り巡って故郷で終るというのはなんとも切ないですが、村雨のお話はこれからですし、やっぱり先を予感させる良い締めだなぁとしみじみ。

 

次はムック書き下ろしエピソードの感想です。

第七.五話 信子の首位獲得（ポールポジション）

◆アンニュイな琴乃
パーカーからオヴァムを渡されてから試験艦隊での事件の間の話。オヴァムをどうしたものか悩む琴乃ちゃんと、彼女と仲を深めつつあるジョーンに対し、信子さんが一計を案じようとするのですが…。

友達として仲良くなるだけじゃ物足りなくなっている自分がいる。
天才キャラは二人もいらない事を思い知らせてやる。

期待を裏切らない女、信子。今回は彼女の暴走が非常に愉快痛快です。

◆首位獲得プロジェクト
その名の通り、琴乃ちゃんの一番になるための計画と思われていたのですが、この言葉には実は別の意味が…。

それはそうと、凹んでいる琴乃ちゃんを元気付けるべく、計画の第一段階として琴乃ちゃん・信子さん・ジョーンの三人はバース市にある露天風呂へと赴きます。

「来ました、ハダカ天国！」

アホだ！この人アホだよ！庶民派な天才の琴乃ちゃんに対して、信子さんは本当に天才キャラなのかとたまに忘れそうになります（笑）。なまにくさんのイラストもまさにハダカ天国でした（笑）。
キッとジョーンに眼を向けるとかこの辺のテンポが読んでいて気持ち良いですな。
コントラバスをわざわざ風呂にまで持ち込むジョーンの真意やいかに。刺客に狙われる事でも警戒しているのだろうか。

安房の国に生まれ、英国の乳牛が育てたパイに幸あれ。

何を言っているんだこの人は。
信子さんの眼鏡は伊達眼鏡で、仕事してますアピールの為のアイテムなんだとか。
もっと慎ましい百合かと思ったら信子さんガチの変態娘でござった…。いいぞもっとやれ。

琴乃ちゃんのパイは、ブライズ・ノートン基地最大と言われているジョーンのパイに勝る逸品かもしれない。

言っているのは信子さんというオチですね、分かります。

湯気を割って出現したジョーンのパイ。それはまるで倫敦の霧の中から出現する、双胴の飛行艦だった。

琴乃の劒冑を信子さん視点で描くと、かなり犯罪的な独白の続く作品になるんじゃないかと夢想した。この後もシリアスな話の合間にちょいちょいパイを気にする信子さん。

「仕手に盲目的に従うのが良い劒冑ではないよ。本当に良い劒冑には芯がある。だから寄りそうことができる」
「はじめから良い劒冑は無い。劒冑は仕手に、仕手は劒冑に作られる。少しずつ関係を深めていけばいいんだ」

…色々な意味で気になるセリフ。まぁさすがにそんなわけは無いと思うのですが。

◆ポールポジション
温泉での我慢比べでいち早く脱落した琴乃ちゃんを、脱衣所で介抱する信子さんですが…どうもこれも計画の一部らしい…。

琴乃ちゃんの初めては私が貰う！

男役と書いてポールポジションと読む…って待て（笑）。やっぱこの人逮捕した良い方がいいよ！キャノン中佐は能力重視で人格は考慮しない方針だったんだな…。

琴乃ちゃんに元気になってもらう為の計画だったわけですが（きっかけはそうでも、最終的に出来上がった計画はただの犯罪にしか思えないのだけど・笑）、琴乃ちゃんも信子さんに元気が無い事を気にしていたそうな。なんだかんだで一番元気になったのは信子さんでしたとさ。

 

結局の所、オヴァム開発の裏側、オヴァムの詳細な設定等は明らかにはされていません。琴乃視点の話だからしょうがないのかな（オヴァムについての妄想はこちらに）。
ただ、琴乃の劒冑の話はこれからも続く可能性があるようで（ムック中の石渡氏のコラムを読むに）、だとしたら何もここで全て謎を解き明かす必要も無いですし、これから先の展開が非常に楽しみというもの。ファンとして続きをじっくり待とうかと思います。

前田の心鉄については後日別記事で。

コメント 2

まだ手に入れてないのに我慢できず感想読んでしまった…
とりあえず信子さんはおっぱい星人なんですね（笑）
本編になかった百合が存分に楽しめるのはいいことだと思います。
村雨も人間形態になれないのかなぁ…
そうすりゃ信子×琴乃が存分に（爆）

琴乃の劒冑はぜひ続いてほしい！
村雨やテル以外にも新しい劒冑が見たいです！

by 村正好き (2010-12-18 01:22) 

>村正好きさん
本編には無かった百合が楽しめるのは確かに良いことですな！この辺りが村正のメディアミックスの上手い所というか、各作品それぞれのカラーが出ていて良い感じ。

琴乃の劒冑はぜひ続いて欲しいですよね。もっともっと村正世界を拡張して欲しい！西洋真打もっと見たい！
by にしん (2010-12-18 16:22)